2025年7月22日火曜日

P72 問68 (マグロウヒル大学演習シリーズ 微積分(上))を解く.

問68

 すべての $n>=N$ について $a_n \ge b_n$ であり、かつ $\lim_{n \to \infty} a_n = A$ および $\lim_{n \to \infty} b_n = B$ が成り立つならば、$A \ge B$ である。

解答の方針

この証明は、「$A-B \ge 0$ を示す」という方針で進めます。

証明

まず、$c_n$ という新しい数列を次のように定義します。

$$c_n = a_n - b_n$$

与えられた条件は以下の3つです。

  1. すべての $n>=N$ に対して $a_n \ge b_n$
  2. $\lim_{n \to \infty} a_n = A$
  3. $\lim_{n \to \infty} b_n = B$

条件1に着目すると、$a_n \ge b_n$ であるため、両辺から $b_n$ を引くと、$a_n - b_n \ge 0$ となります。
これは、私たちが定義した数列 $c_n$ が常に非負であることを意味します。

つまり、すべての $n>=N$ に対して $c_n \ge 0$ が成り立ちます。

次に、この数列 $c_n$ の極限を調べてみましょう。
極限の線形性(和と差の極限はそれぞれの極限の和と差になる性質)を利用します。

$$\lim_{n \to \infty} c_n = \lim_{n \to \infty} (a_n - b_n)$$

与えられた条件2と3を適用すると、以下のようになります。

$$\lim_{n \to \infty} (a_n - b_n) = \lim_{n \to \infty} a_n - \lim_{n \to \infty} b_n$$

したがって、

$$\lim_{n \to \infty} c_n = A - B$$

ここで、重要な定理を思い出しましょう。
「もし数列 $c_n$ がすべての項で $c_n \ge 0$ であり、かつその極限が存在して $L$ であるならば、その極限 $L$ もまた $L \ge 0$ である」という定理です。

私たちの数列 $c_n$ は、すべての $n$ で $c_n \ge 0$ であり、その極限は $A - B$ です。
この定理を適用すると、次が成り立たなければなりません。

$$A - B \ge 0$$

この不等式の両辺に $B$ を加えることで、最終的な結論が得られます。

$$A \ge B$$

まとめ

この証明により、もし2つの数列が常に片方がもう片方以上であるという関係を保ちながら収束するならば、それぞれの極限値の間にも同じ大小関係が成り立つことが示されました。これは、極限操作が不等式関係を保存する良い例であり、解析学において非常に基本的な性質の一つです。

この内容が、皆さんの数学の理解に役立てば幸いです。