問65
$$ \lim_{n \to \infty} n \sin(1/n) = 1 を証明せよ。 $$
$ n \sin(1/n)$ の極限が $1$ であることを証明します。この証明では、関数の極限の基本的な性質と、幾何学的な考察に基づいて、はさみうちの原理で解きます。
関数の極限
求めたい極限は $\lim_{n \to \infty} n \sin(1/n)$ です。
ここで、$x = 1/n$ とおきます。$n \to \infty$ のとき、$x \to 0$ となります。特に、$n$ は自然数なので、$x$ は正の値を取りながら $0$ に近づきます($x \to 0^+$)。
したがって、与えられた数列の極限は、関数の極限として次のように書き換えられます。
$$ \lim_{n \to \infty} n \sin(1/n) = \lim_{x \to 0^+} \frac{1}{x} \sin(x) $$これは次のように変形できます。
$$ \lim_{x \to 0^+} \frac{\sin(x)}{x} $$幾何学的な考察とはさみうちの原理
この極限 $\lim_{x \to 0^+} \frac{\sin(x)}{x}$ が $1$ に等しいことを、幾何学的な考察とはさみうちの原理を用いて証明します。
$0 < x < \pi/2$ の範囲を考えます。単位円(半径 $1$ の円)において、中心を $O$、円周上の点を $A, B$ とします。点 $A=(1,0)$ とし、角 $AOB$ を $x$ ラジアンとします。また、点 $A$ から $x$ 軸に垂直に伸ばした線と、線分 $OB$ の延長線との交点を $C$ とします。
このとき、図形的に以下の面積の大小関係が成り立ちます。
三角形 $OAB$ の面積 $\le$ 扇形 $OAB$ の面積 $\le$ 三角形 $OAC$ の面積
それぞれの面積を計算すると:
- 三角形 $OAB$ の面積: 底辺 $1$、高さ $\sin x$ なので、$\frac{1}{2} \cdot 1 \cdot \sin x = \frac{1}{2} \sin x$
- 扇形 $OAB$ の面積: 半径 $1$、中心角 $x$ なので、$\frac{1}{2} \cdot 1^2 \cdot x = \frac{1}{2} x$
- 三角形 $OAC$ の面積: 底辺 $OA=1$、高さ $AC=\tan x$ なので、$\frac{1}{2} \cdot 1 \cdot \tan x = \frac{1}{2} \tan x$
これらの面積の大小関係を式で表すと、
$$ \frac{1}{2} \sin x \le \frac{1}{2} x \le \frac{1}{2} \tan x $$この不等式全体を $2$ 倍すると、
$$ \sin x \le x \le \tan x $$となります。
ここで、$0 < x < \pi/2$ では $\sin x > 0$ なので、この不等式全体を $\sin x$ で割ることができます。不等号の向きは変わりません。
$$ \frac{\sin x}{\sin x} \le \frac{x}{\sin x} \le \frac{\tan x}{\sin x} $$ $$ 1 \le \frac{x}{\sin x} \le \frac{\sin x / \cos x}{\sin x} $$ $$ 1 \le \frac{x}{\sin x} \le \frac{1}{\cos x} $$次に、各辺の逆数を取ります。逆数を取ると不等号の向きが逆転することに注意してください。
$$ \frac{1}{1} \ge \frac{\sin x}{x} \ge \cos x $$整理すると、
$$ \cos x \le \frac{\sin x}{x} \le 1 $$となります。
ここで、$x \to 0^+$ の極限を考えます。
$$ \lim_{x \to 0^+} \cos x = \cos 0 = 1 $$したがって、はさみうちの原理により、
$$ \lim_{x \to 0^+} \frac{\sin x}{x} = 1 $$が導かれます。
結論
この結果を元の数列の極限に戻すと、
$$ \lim_{n \to \infty} n \sin(1/n) = \lim_{x \to 0^+} \frac{\sin(x)}{x} = 1 $$したがって、$ n \sin(1/n)$ の極限は $1$ であることが証明されました。
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