2025年7月27日日曜日

P71 問62 (マグロウヒル大学演習シリーズ 微積分(上))を解く.

問62

 $\lim_{n \to \infty} |u_{n+1}/u_n| = |a| < 1$ ならば $\lim_{n \to \infty} u_n = 0$ であることを証明せよ.

証明の方針

 これは級数の収束判定で用いられるダランベールの収束判定法の証明の一部と同じ考え方を使います。

  1. $\lim_{n \to \infty} |u_{n+1}/u_n| = |a| < 1$ という条件から、十分大きな $n$ に対して $|u_{n+1}/u_n|$ が1より小さい定数 $r$ で上から抑えられることを示します。
  2. 具体的には、$|a| < r < 1$ となる $r$ を選びます。極限の定義から、ある番号 $N$ が存在し、$n \ge N$ ならば $|u_{n+1}/u_n| < r$ となることを利用します。
  3. この不等式を繰り返し使うと、$|u_n|$ が公比 $r$ の等比数列 $C \cdot r^n$ で抑えられることがわかります。
  4. $0 < r < 1$ なので $\lim_{n \to \infty} r^n = 0$ です。
  5. はさみうちの原理を使って $\lim_{n \to \infty} |u_n| = 0$ を導き、そこから $\lim_{n \to \infty} u_n = 0$ を示します。

解答

 $\lim_{n \to \infty} |u_{n+1}/u_n| = |a|$ であり、仮定より $|a| < 1$ です。

 ここで、$|a| < r < 1$ を満たす実数 $r$ を1つ選びます。(例えば $r = (|a| + 1) / 2$ とすればよいです。)

 $\epsilon = r - |a|$ とおくと、$\epsilon > 0$ です。 数列の極限の定義から、この $\epsilon$ に対して、ある自然数 $N$ が存在し、$n \ge N$ を満たすすべての $n$ について、 $$ | |u_{n+1}/u_n| - |a| | < \epsilon $$ が成り立ちます。この不等式は、 $$ |u_{n+1}/u_n| - |a| < \epsilon \iff |u_{n+1}/u_n| < |a| + \epsilon = |a| + (r - |a|) = r $$ を意味します。つまり、$n \ge N$ のとき $|u_{n+1}/u_n| < r$ が成り立ちます。

 $n > N$ のとき、この関係を繰り返し用いると、 $$ \begin{aligned} |u_n| &= \left| \frac{u_n}{u_{n-1}} \cdot \frac{u_{n-1}}{u_{n-2}} \cdot \dots \cdot \frac{u_{N+1}}{u_N} \cdot u_N \right| \\ &= \left|\frac{u_n}{u_{n-1}}\right| \cdot \left|\frac{u_{n-1}}{u_{n-2}}\right| \cdot \dots \cdot \left|\frac{u_{N+1}}{u_N}\right| \cdot |u_N| \\ &< r \cdot r \cdot \dots \cdot r \cdot |u_N| = r^{n-N} |u_N| \end{aligned} $$ となります。ここで $C = |u_N| / r^N$ とおくと、$C$ は正の定数であり、$|u_n| < C \cdot r^n$ と書けます。

 したがって、$n > N$ において $0 \le |u_n| < C \cdot r^n$ が成り立ちます。 $0 < r < 1$ なので $\lim_{n \to \infty} r^n = 0$ であり、よって $\lim_{n \to \infty} C \cdot r^n = 0$ です。

 はさみうちの原理より、$\lim_{n \to \infty} |u_n| = 0$ が得られます。 $-|u_n| \le u_n \le |u_n|$ であり、$\lim_{n \to \infty} |u_n| = 0$ かつ $\lim_{n \to \infty} -|u_n| = 0$ なので、再びはさみうちの原理より $\lim_{n \to \infty} u_n = 0$ となります。

2025年7月25日金曜日

P71 問66 (マグロウヒル大学演習シリーズ 微積分(上))を解く.

問66

 $\{ u_n \}$がフィボナッチ数列ならば,$\lim_{n \to \infty} \frac{u_{n+1}}{u_n} = \frac{1 + \sqrt{5}}{2}$ であることを証明せよ.

 フィボナッチ数列 $\{ u_n \}$ は $u_1=1, u_2=1, u_{n+2} = u_{n+1} + u_n ( n \ge 1 )$で定義されます.この問題の主張は,フィボナッチ数列のある項とその次の項の比が黄金比に収束するということです.等比数列ならばその比は一定だが,フィボナッチ数列はだんだんと黄金比になります.

証明の方針

 本問題の目標は,$u_{n+1}/u_n$ の極限が黄金比に等しいことを示すことです.すなわち,

  1. $a_n = u_{n+1}/u_n$ とおいたとき,$a_n$ が収束すること.
    • 部分列の単調性・有界性から,収束性を示します.
  2. $a_n$ の極限は黄金比であること.
    • 部分列の極限から,$a_n$の極限を特定します.

を示すことと同じです.

解答

 $a_n = u_{n+1}/u_n$ とおく.$a_n$ が単調増加もしくは単調減少で有界ならば収束するので,単調性を調べるために $a_{n+1} - a_n$ について考えたいが,うまく単調性を見い出せません.$a_1,a_2,a_3,...$ を計算してみると,振動しているようなので,部分列(偶数番目・奇数番目)の単調性からアプローチします.部分列がともに同じ値に収束すれば,数列もその値に収束するからです.

1. 部分列の単調性を示す.

 $a_n$ は振動しているので,以下で偶数番目と奇数番目の部分列の単調性を示します.

偶数番目の部分列 $a_{2k}$ の単調減少性を示す.

 偶数番目の部分列 $a_{2k}$ が単調減少であること、つまり $a_{2k+2} - a_{2k} < 0$ が成り立つことを示します。

$$ \begin{aligned} a_{2k+2} - a_{2k} &= \frac{u_{2k+3}}{u_{2k+2}} - \frac{u_{2k+1}}{u_{2k}} \\ &= \frac{u_{2k+3} u_{2k} - u_{2k+1} u_{2k+2}}{u_{2k+2} u_{2k}} \end{aligned} $$

ここで、分子 $u_{2k+3} u_{2k} - u_{2k+1} u_{2k+2}$ に着目し,フィボナッチ数列の漸化式 $u_n = u_{n-1} + u_{n-2}$ を用いて変形します.

$$ \begin{aligned} u_{2k+3} u_{2k} - u_{2k+1} u_{2k+2} &= (u_{2k+2} + u_{2k+1}) u_{2k} - u_{2k+1} u_{2k+2} \\ &= u_{2k+2} u_{2k} + u_{2k+1} u_{2k} - u_{2k+1} u_{2k+2} \\ &= u_{2k+2} u_{2k} - u_{2k+1} (u_{2k+2} - u_{2k}) \\ &= u_{2k+2} u_{2k} - u_{2k+1}^2 \end{aligned} $$

ここでカッシーニの恒等式を適用します.これはフィボナッチ数列の重要な性質です.

カッシーニの恒等式

$$u_{n+2} u_n - u_{n+1}^2 = (-1)^{n+1}$$

すると $u_{2k+2} u_{2k} - u_{2k+1}^2 = (-1)^{2k+1}$ なので,

$$ \begin{aligned} a_{2k+2} - a_{2k} &= \frac{(-1)^{2k+1}}{u_{2k+2} u_{2k}} \\ &= \frac{-1}{u_{2k+2} u_{2k}} < 0 \end{aligned} $$

となり,すなわち $a_{2k+2} - a_{2k} < 0$ なので,$a_{2k}$ の単調減少性が示されました.

奇数番目の部分列 $a_{2k-1}$ の単調増加性を示す.

 奇数番目の部分列 $a_{2k-1}$ が単調増加であること、つまり $a_{2k+1} - a_{2k-1} > 0$ が成り立つことを示します。偶数番目の部分列と同様にすると,

$$ a_{2k+1} - a_{2k-1} = \frac{1}{u_{2k+1} u_{2k-1}} > 0 $$

となり,すなわち $a_{2k+1} - a_{2k-1} > 0$ なので,$a_{2k-1}$ の単調増加性が示されました.

2. 部分列の有界性を示す.

偶数番目の部分列の有界性を示す.

 偶数番目の部分列 $a_{2k} = u_{2k+1} / u_{2k}$ は、すでに単調減少であることを示しました.したがって、この数列は最初の項 $a_2$ が最大値となります。$a_2 = u_3 / u_2 = 2 / 1 = 2$.ゆえに、$a_{2k} \le 2$ が常に成り立ちます。

 次に、この数列が下に有界であることを示します。ここで数列$a_n$は以下の関係式が成り立つことを使います.

$$ a_{n+1} - a_n = \frac{(-1)^{n+1}}{u_{n+1} u_n} $$

数列 $a_n$ の定義とカッシーニの恒等式から導くことができます.$(-1)^{n+1}$ の符号がポイントです.

$n$ が偶数の場合,つまり $n = 2k$ とすると,

$$ a_{2k+1} - a_{2k} = \frac{-1}{u_{2k+1} u_{2k}} < 0 $$

となり,$a_{2k+1} < a_{2k}$ が成り立ちます.これは、奇数番目の項は、直前の偶数番目の項より小さいことを意味します。(例: $a_3 < a_2, a_5 < a_4$ )

$n$ が奇数の場合,つまり $n = 2k - 1$ とすると,

$$ a_{2k} - a_{2k-1} = \frac{1}{u_{2k} u_{2k-1}} > 0 $$

となり,$a_{2k} > a_{2k-1}$が成り立ちます.これは、偶数番目の項は、直前の奇数番目の項より大きいことを意味します。(例: $a_2 > a_1, a_4 > a_3$ )

 これら2つの結果をまとめると,偶数番目の数列の項は前後の奇数番目の項より大きいということです.そして,奇数番目の部分列が単調増加で $1 \le a_{2k-1}$ であることを合わせると,$1 \le a_{2k-1} < a_{2k} \le 2$ なので,$1 < a_{2k} \le 2$ です.つまり,偶数番目の部分列は有界であることが示せました.

奇数番目の部分列の有界性を示す.

 偶数番目の部分列の有界性を示す中で,$1 \le a_{2k-1} < a_{2k} \le 2$ が明らかになりました.これはつまり,$1 \le a_{2k-1} < 2$ なので,奇数番目の部分列の有界性も示せました.

3. 極限を示す.

 偶数番目の部分列 $a_{2k}$ と 奇数番目の部分列 $a_{2k-1}$ はともに単調な数列で有界であることがわかりました.したがって,それぞれ収束します.そこで,$\lim_{k \to \infty} a_{2k} = L_e, \lim_{k \to \infty} a_{2k-1} = L_o$ とします.

極限が同一であること.

 数列 $a_n$ は以下の関係を満たすことが計算するとわかります.

$$ a_{n+1} = 1 + \frac{1}{a_n} $$

つまり,

$$ \begin{aligned} a_{2k+1} &= 1 + \frac{1}{a_{2k}} \\ a_{2k} &= 1 + \frac{1}{a_{2k-1}} \end{aligned} $$

となり,両辺,極限を取ると

$$ \begin{aligned} L_o &= 1 + \frac{1}{L_e} \\ L_e &= 1 + \frac{1}{L_o} \end{aligned} $$

となります.この連立方程式を解くと $L_o = L_e$ となります.極限が同じであることがわかりました.

極限を特定する.

 上の連立方程式から,共通の極限値を $L$ とすると

$$ L = 1 + \frac{1}{L} $$

が成り立っており,これを $L$ について解くと,$L$が正であることから,

$$ L = \frac{1 + \sqrt{5}}{2} $$

となります.

 以上より,$ \lim_{n \to \infty} \frac{u_{n+1}}{u_n} = \frac{1 + \sqrt{5}}{2}$ が示せました.

2025年7月24日木曜日

P71 問65 (マグロウヒル大学演習シリーズ 微積分(上))を解く.

問65

$$ \lim_{n \to \infty} n \sin(1/n) = 1 を証明せよ。 $$


 $ n \sin(1/n)$ の極限が $1$ であることを証明します。この証明では、関数の極限の基本的な性質と、幾何学的な考察に基づいて、はさみうちの原理で解きます。

関数の極限

求めたい極限は $\lim_{n \to \infty} n \sin(1/n)$ です。

ここで、$x = 1/n$ とおきます。$n \to \infty$ のとき、$x \to 0$ となります。特に、$n$ は自然数なので、$x$ は正の値を取りながら $0$ に近づきます($x \to 0^+$)。

したがって、与えられた数列の極限は、関数の極限として次のように書き換えられます。

$$ \lim_{n \to \infty} n \sin(1/n) = \lim_{x \to 0^+} \frac{1}{x} \sin(x) $$

これは次のように変形できます。

$$ \lim_{x \to 0^+} \frac{\sin(x)}{x} $$

幾何学的な考察とはさみうちの原理

この極限 $\lim_{x \to 0^+} \frac{\sin(x)}{x}$ が $1$ に等しいことを、幾何学的な考察とはさみうちの原理を用いて証明します。

$0 < x < \pi/2$ の範囲を考えます。単位円(半径 $1$ の円)において、中心を $O$、円周上の点を $A, B$ とします。点 $A=(1,0)$ とし、角 $AOB$ を $x$ ラジアンとします。また、点 $A$ から $x$ 軸に垂直に伸ばした線と、線分 $OB$ の延長線との交点を $C$ とします。

このとき、図形的に以下の面積の大小関係が成り立ちます。

三角形 $OAB$ の面積 $\le$ 扇形 $OAB$ の面積 $\le$ 三角形 $OAC$ の面積

それぞれの面積を計算すると:

  1. 三角形 $OAB$ の面積: 底辺 $1$、高さ $\sin x$ なので、$\frac{1}{2} \cdot 1 \cdot \sin x = \frac{1}{2} \sin x$
  2. 扇形 $OAB$ の面積: 半径 $1$、中心角 $x$ なので、$\frac{1}{2} \cdot 1^2 \cdot x = \frac{1}{2} x$
  3. 三角形 $OAC$ の面積: 底辺 $OA=1$、高さ $AC=\tan x$ なので、$\frac{1}{2} \cdot 1 \cdot \tan x = \frac{1}{2} \tan x$

これらの面積の大小関係を式で表すと、

$$ \frac{1}{2} \sin x \le \frac{1}{2} x \le \frac{1}{2} \tan x $$

この不等式全体を $2$ 倍すると、

$$ \sin x \le x \le \tan x $$

となります。

ここで、$0 < x < \pi/2$ では $\sin x > 0$ なので、この不等式全体を $\sin x$ で割ることができます。不等号の向きは変わりません。

$$ \frac{\sin x}{\sin x} \le \frac{x}{\sin x} \le \frac{\tan x}{\sin x} $$ $$ 1 \le \frac{x}{\sin x} \le \frac{\sin x / \cos x}{\sin x} $$ $$ 1 \le \frac{x}{\sin x} \le \frac{1}{\cos x} $$

次に、各辺の逆数を取ります。逆数を取ると不等号の向きが逆転することに注意してください。

$$ \frac{1}{1} \ge \frac{\sin x}{x} \ge \cos x $$

整理すると、

$$ \cos x \le \frac{\sin x}{x} \le 1 $$

となります。

ここで、$x \to 0^+$ の極限を考えます。

$$ \lim_{x \to 0^+} \cos x = \cos 0 = 1 $$

したがって、はさみうちの原理により、

$$ \lim_{x \to 0^+} \frac{\sin x}{x} = 1 $$

が導かれます。

結論

この結果を元の数列の極限に戻すと、

$$ \lim_{n \to \infty} n \sin(1/n) = \lim_{x \to 0^+} \frac{\sin(x)}{x} = 1 $$

したがって、$ n \sin(1/n)$ の極限は $1$ であることが証明されました。

2025年7月23日水曜日

P72 問67 (マグロウヒル大学演習シリーズ 微積分(上))を解く.

数列 $\left(1 + \frac{1}{n}\right)^{n+1}$ の単調性と極限

問67

$$u_n = \left(1 + \frac{1}{n}\right)^{n+1} n=1,2,3, \cdots $$ が単調減少数列であること、そしてその極限が $e$ であることを証明せよ.

1. 単調減少性の証明

数列 $u_n$ が単調減少であることを示すには、$u_{n+1} \le u_n$ が全ての $n \ge 1$ について成り立つことを証明すれば良いです。これは、比 $\frac{u_{n+1}}{u_n} \le 1$ を示すことと同義です。

まず、$u_n$ と $u_{n+1}$ の定義を書き出しましょう。 $$u_n = \left(1 + \frac{1}{n}\right)^{n+1} = \left(\frac{n+1}{n}\right)^{n+1}$$ $$u_{n+1} = \left(1 + \frac{1}{n+1}\right)^{n+2} = \left(\frac{n+2}{n+1}\right)^{n+2}$$

次に、$\frac{u_{n+1}}{u_n} \le 1$ が示すべき不等式、すなわち $u_{n+1} \le u_n$ を直接見ていきましょう。 $$\left(1 + \frac{1}{n+1}\right)^{n+2} \le \left(1 + \frac{1}{n}\right)^{n+1}$$

この不等式を変形してみます。 $$\frac{\left(1 + \frac{1}{n+1}\right)^{n+2}}{\left(1 + \frac{1}{n}\right)^{n+1}} \le 1$$ $$ \left(1 + \frac{1}{n+1}\right) \left( \frac{1 + \frac{1}{n+1}}{1 + \frac{1}{n}} \right)^{n+1} \le 1 $$ ここで、分数部分を計算します。 $$ \frac{1 + \frac{1}{n+1}}{1 + \frac{1}{n}} = \frac{\frac{n+2}{n+1}}{\frac{n+1}{n}} = \frac{n+2}{n+1} \cdot \frac{n}{n+1} = \frac{n(n+2)}{(n+1)^2} = \frac{n^2+2n}{n^2+2n+1} $$ よって、示すべき不等式は以下のようになります。 $$ \left(\frac{n+2}{n+1}\right) \left(\frac{n^2+2n}{n^2+2n+1}\right)^{n+1} \le 1 $$

上記で得られた不等式をさらに変形し、以下の形を考えます。 $$ \frac{n+2}{n+1} \le \left(\frac{n^2+2n+1}{n^2+2n}\right)^{n+1} $$ $$ \frac{n+2}{n+1} \le \left(1 + \frac{1}{n^2+2n}\right)^{n+1} $$

ここで、次の一般的な不等式を利用します。 任意の正の数 $x \neq 0$ と実数 $r>1$ に対して、$(1+x)^r > 1+rx$ が成り立ちます。(これはベルヌーイの不等式です.) $X = \frac{1}{n^2+2n}$、$R = n+1$ と置くと、$x > 0$、$r > 1$ です。 したがって、 $$ \begin{align*} \left(1 + \frac{1}{n^2+2n}\right)^{n+1} &> 1 + (n+1) \cdot \frac{1}{n^2+2n} \\ &= 1 + \frac{n+1}{n(n+2)} \\ &= \frac{n(n+2) + (n+1)}{n(n+2)} \\ &= \frac{n^2+2n+n+1}{n^2+2n} \\ &= \frac{n^2+3n+1}{n^2+2n} \end{align*} $$

これで、示したい不等式は次のようになります。 $$ \frac{n+2}{n+1} \le \frac{n^2+3n+1}{n^2+2n} $$ この不等式が真であることを確認します。両辺に分母を掛けて整理します。(分母は全て正なので不等号の向きは変わりません。) $$ (n+2)(n^2+2n) \le (n+1)(n^2+3n+1) $$ 左辺を展開します。 $$ n^3 + 2n^2 + 2n^2 + 4n = n^3 + 4n^2 + 4n $$ 右辺を展開します。 $$ n^3 + 3n^2 + n + n^2 + 3n + 1 = n^3 + 4n^2 + 4n + 1 $$ したがって、元の不等式は次のようになります。 $$ n^3 + 4n^2 + 4n \le n^3 + 4n^2 + 4n + 1 $$ この不等式は、$0 \le 1$ となり、明らかに全ての $n \ge 1$ に対して真です。

よって、我々が目指していた $$ \left(\frac{n+2}{n+1}\right) \left(\frac{n^2+2n}{n^2+2n+1}\right)^{n+1} \le 1 $$ すなわち $\frac{u_{n+1}}{u_n} \le 1$ が証明されました。これは $u_{n+1} \le u_n$ を意味し、数列 $u_n$ は単調減少であることを示しています。 ($n \ge 1$ においては常に厳密な不等号 $u_{n+1} < u_n$ が成り立ちます。)

2. 極限値の計算

次に、数列 $u_n$ の極限値を求めます。 $$\lim_{n \to \infty} u_n = \lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^{n+1}$$ この式は次のように変形できます。 $$\lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^{n+1} = \lim_{n \to \infty} \left[ \left(1 + \frac{1}{n}\right)^n \cdot \left(1 + \frac{1}{n}\right)^1 \right]$$

極限の性質を利用して、積の極限として分離します。 $$= \left( \lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^n \right) \cdot \left( \lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^1 \right)$$

ここで、自然対数の底 $e$ の定義から、$\lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^n = e$ です。 また、2番目の極限は容易に計算できます。 $$\lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^1 = (1 + 0) = 1$$

したがって、 $$\lim_{n \to \infty} u_n = e \cdot 1 = e$$

数列 $u_n = \left(1 + \frac{1}{n}\right)^{n+1}$ は単調減少であり、その極限値は $e$ であることが証明されました。

2025年7月22日火曜日

P72 問68 (マグロウヒル大学演習シリーズ 微積分(上))を解く.

問68

 すべての $n>=N$ について $a_n \ge b_n$ であり、かつ $\lim_{n \to \infty} a_n = A$ および $\lim_{n \to \infty} b_n = B$ が成り立つならば、$A \ge B$ である。

解答の方針

この証明は、「$A-B \ge 0$ を示す」という方針で進めます。

証明

まず、$c_n$ という新しい数列を次のように定義します。

$$c_n = a_n - b_n$$

与えられた条件は以下の3つです。

  1. すべての $n>=N$ に対して $a_n \ge b_n$
  2. $\lim_{n \to \infty} a_n = A$
  3. $\lim_{n \to \infty} b_n = B$

条件1に着目すると、$a_n \ge b_n$ であるため、両辺から $b_n$ を引くと、$a_n - b_n \ge 0$ となります。
これは、私たちが定義した数列 $c_n$ が常に非負であることを意味します。

つまり、すべての $n>=N$ に対して $c_n \ge 0$ が成り立ちます。

次に、この数列 $c_n$ の極限を調べてみましょう。
極限の線形性(和と差の極限はそれぞれの極限の和と差になる性質)を利用します。

$$\lim_{n \to \infty} c_n = \lim_{n \to \infty} (a_n - b_n)$$

与えられた条件2と3を適用すると、以下のようになります。

$$\lim_{n \to \infty} (a_n - b_n) = \lim_{n \to \infty} a_n - \lim_{n \to \infty} b_n$$

したがって、

$$\lim_{n \to \infty} c_n = A - B$$

ここで、重要な定理を思い出しましょう。
「もし数列 $c_n$ がすべての項で $c_n \ge 0$ であり、かつその極限が存在して $L$ であるならば、その極限 $L$ もまた $L \ge 0$ である」という定理です。

私たちの数列 $c_n$ は、すべての $n$ で $c_n \ge 0$ であり、その極限は $A - B$ です。
この定理を適用すると、次が成り立たなければなりません。

$$A - B \ge 0$$

この不等式の両辺に $B$ を加えることで、最終的な結論が得られます。

$$A \ge B$$

まとめ

この証明により、もし2つの数列が常に片方がもう片方以上であるという関係を保ちながら収束するならば、それぞれの極限値の間にも同じ大小関係が成り立つことが示されました。これは、極限操作が不等式関係を保存する良い例であり、解析学において非常に基本的な性質の一つです。

この内容が、皆さんの数学の理解に役立てば幸いです。