問62
limn→∞∣un+1/un∣=∣a∣<1 ならば limn→∞un=0 であることを証明せよ.
証明の方針
これは級数の収束判定で用いられるダランベールの収束判定法の証明の一部と同じ考え方を使います。
- limn→∞∣un+1/un∣=∣a∣<1 という条件から、十分大きな n に対して ∣un+1/un∣ が1より小さい定数 r で上から抑えられることを示します。
- 具体的には、∣a∣<r<1 となる r を選びます。極限の定義から、ある番号 N が存在し、n≥N ならば ∣un+1/un∣<r となることを利用します。
- この不等式を繰り返し使うと、∣un∣ が公比 r の等比数列 C⋅rn で抑えられることがわかります。
- 0<r<1 なので limn→∞rn=0 です。
- はさみうちの原理を使って limn→∞∣un∣=0 を導き、そこから limn→∞un=0 を示します。
解答
limn→∞∣un+1/un∣=∣a∣ であり、仮定より ∣a∣<1 です。
ここで、∣a∣<r<1 を満たす実数 r を1つ選びます。(例えば r=(∣a∣+1)/2 とすればよいです。)
ϵ=r−∣a∣ とおくと、ϵ>0 です。
数列の極限の定義から、この ϵ に対して、ある自然数 N が存在し、n≥N を満たすすべての n について、
∣∣un+1/un∣−∣a∣∣<ϵ
が成り立ちます。この不等式は、
∣un+1/un∣−∣a∣<ϵ⟺∣un+1/un∣<∣a∣+ϵ=∣a∣+(r−∣a∣)=r
を意味します。つまり、n≥N のとき ∣un+1/un∣<r が成り立ちます。
n>N のとき、この関係を繰り返し用いると、
∣un∣=un−1un⋅un−2un−1⋅⋯⋅uNuN+1⋅uN=un−1un⋅un−2un−1⋅⋯⋅uNuN+1⋅∣uN∣<r⋅r⋅⋯⋅r⋅∣uN∣=rn−N∣uN∣
となります。ここで C=∣uN∣/rN とおくと、C は正の定数であり、∣un∣<C⋅rn と書けます。
したがって、n>N において 0≤∣un∣<C⋅rn が成り立ちます。
0<r<1 なので limn→∞rn=0 であり、よって limn→∞C⋅rn=0 です。
はさみうちの原理より、limn→∞∣un∣=0 が得られます。
−∣un∣≤un≤∣un∣ であり、limn→∞∣un∣=0 かつ limn→∞−∣un∣=0 なので、再びはさみうちの原理より limn→∞un=0 となります。